誰でも参加できるモータースポーツの登竜門
世界には様々なモータースポーツがありますが、エンデューロはそのなかでも多くの人が楽しんでいるオフロードモータースポーツの1つです。
日本ではエンデューロと言うと「モトクロスコースを長時間走る競技」といった、耐久レース的なイメージが強いですが、実際はかなり違います。ヘアスクランブル、クロスカントリーと呼ばれるそうしたレースも楽しいものですが、このJECでは世界選手権エンデューロやISDE(インターナショナルシックスデイズトライアル)と同じ、タイムアタック方式を採用しています。
オンタイム形式・タイムアタック方式などと呼ばれるこの方式で挑むのは、ライバルよりも前に出てゴールすることではなく、ライバルよりも速いタイムを出すことです。エンデューロのコースには1箇所〜数カ所の「テスト」(競技区間)があり、1台づつコースインします。大会によっては20以上にもなる、このテストの合計時間で順位を競うのが「エンデューロ」です。
テストとテストの間にはルートと呼ばれる移動区間があります。この移動区間にも、オフロードのスキルが試されるテクニカルなセクションが設定されることも一般的です。ルートを規定時間以内に走り、テストでは1秒を削るアタックを行うことで順位を競うわけです。
自然と時間に自分ひとりで挑む楽しさ
エンデューロの魅力はその人によって異なるでしょうが、誰もがうなずくのは自然に溢れるコースの魅力でしょう。エンデューロ経験の多いライダーが自然の山の中に設定したコースはじつにバリエーションに満ちています。細い山道、アップダウンの多い山の斜面の走行、川を横切ったり、遡上したり。日本のオフロードで体験する地形の全てが詰まっています。
その自然の地形のなかのベストラインを見つけてベストタイムに挑む楽しさは、一度体験したら病みつきになってしまうものです。
また、自分が挑む相手が「時間」ということもあって、選手間のバトルが穏やかであることもこの競技の魅力です。1台1台スタートするため、テスト中での敵は「時間と自分」です。いかに集中力を高め、テクニックを駆使し、ロスなくテストを駆け抜けるか。同じ敵に挑むライバルたちは、みんな仲間になっていきます。これもまた、エンデューロの魅力です。
ビギナーから参加可能なJEC
JECは「全日本エンデューロ選手権」ではありますが、どの大会も、アマチュア・ホビーライダーが参加しやすい「承認クラス」を設定しています。ナショナル以上の全日本クラスに出場するにはMFJのエンデューロライセンスが必要ですが、承認クラスはエンジョイ会員でOK。大会によっては、コースも専用のものが用意されています。まったくのオフロードビギナーだとちょっと厳しいかもしれませんが、多少レース経験のあるライダーなら誰でも楽しめると思います。
出場するためには、エンデューロマシンとウエア、それにキャメルバッグなど長時間走るための装備があれば十分です。公道を使用しないエンデューロでは、モトクロッサーなどの競技専用車でも参戦可能です。タイヤは、大会によってFIM規格適合のエンデューロタイヤに限られる場合がありますので注意してください。
スキルは、JNCCなどのクロスカントリーに出場し、完走した経験のあるライダーであればおそらく大丈夫でしょう。モトクロスコースしか走ったことがない、あるいは林道しか走ったことがない……というライダーは多少苦労するかもでしれませんが、逆にそれだけ大きい手応え、驚きを楽しんでいただけるはずです。
JECに限らず、エンデューロ競技では、競技の公平性を重視するため「選手の大半が問題なく走破できる」コース設定をしています。トップライダーでなければ通過できないようなセクションはありませんし、もしコンディションでそうなってしまった場合は適宜変更されますので安心してください。
身近な開催地の大会からの参加でOK
よく「最初にどれに出ればいいですか?」と聞かれますが、どれに出ても楽しめると思います。手軽なワンデイの大会が家から近いのであればそれがいいでしょうし、北海道の方なら日高ツーデイズでいいと思います。ワンデイ、ツーデイズ、という違いはありますが、競技フォーマットや楽しさはどれも変わりません。
どの大会でもJECに参戦したら、きっとこれまで経験したことのない素晴らしい体験が出来るでしょう。細い山道を上がりきって出た、山の稜線からの眺め。どこを走ればよいのか迷うほど広い草原の中を自由に走る快感。驚くほど急な下り坂を下りていくドキドキ感と、無事に走れたときの達成感。
テスト内では他のライダーはすべてライバルとなりますが、ルートでは(邪魔な場合を除き抜いても仕方ないので)、同じような速度で走っているライダーとはまるで一緒にツーリングしているような、リラックスした気分で走行を楽しめます。この感覚は長時間競い続けるクロスカントリーと大きく異なるところです。
素晴らしい眺め。連帯感。これまで出会ったことのない路面、テクニカルなセクション。そんな場所を驚く速さで駆け抜けていくトップライダーのテクニックにも目を見張ることでしょう。そう、全日本エンデューロは、モトクロスやトライアルとは異なり、全日本のトップランカーもビギナーも同じコースを走るのです。これって、ちょっと凄くないですか?
ぜひ一度、トライしてみてください。最初はうまく走れないかもしれないし、ひょっとすると完走すら出来ないかもしれません。しかし、それだけにきっと「こんな世界があったのか」と気づき、夢中になってしまうはずです。そしてこの世界の先は、まっすぐそのまま、世界へと続いているのです。
エンデューロライダーは全員、皆さんのトライを待っています。遅くても、ヘタでも、一生懸命やる気持ちがあればOKです。歓迎しますよ。ぜひお越しください!