全日本エンデューロ選手権 第1戦 広島大会 レポート
全日本エンデューロ選手権も、いよいよ開幕。受付車検が始まる早朝は、ひどい濃霧が立ちこめたものの、スタートを迎える9時頃にはすっかり天候が回復。テージャスランチは朝に霧が出ると昼に暑くなる、といった地元の情報通り、気温がグングンと上昇して熱中症すら心配されるほどの陽気になった。
各クラス周回数と区間タイムなど
IA・IB 7周(1周区間タイム:40分、35分、30分)
ナショナル 6周(1周区間タイム:40分)
全日本ウィメンズ・B1・B2 5周(1周区間タイム:45分)
C1・C2・CW 4周(1周区間タイム:50分)
※今季より全日本ウィメンズクラスのコース設定は、Bクラスと同じコース設定に。今大会はウィメンズクラスのショートカットは設定されていない
日差しが照りつける中、コースコンディションはまれに見るほどの良好なものに。ウェットであれば手に負えないテージャスランチの裏山も、すっかりグリップを取り戻し、前日に心配されていたコースの難しさは解消。ピリっと辛い走りごたえのあるレースとなり、IAに1名、IBに3名、Nに10名のDNFといった結果である。
IAクラス 得意の2スト250で鈴木健二が圧勝
おろしたてのYZ250Xを持ち込んだ鈴木だったが、レース序盤の立ち上がりから好調。1番時計を連発していき、ライバルである釘村忠を圧倒。ついでタイムを出していたのは、前橋孝洋で、1周目のタイムでは鈴木8分26秒、釘村8分33秒、前橋8分43秒とトップ2に迫るタイムでの立ち上がりを見せる。しかし、これに呼応していたのが約5年ぶりのJEC参戦となる友山雅人で1周目8分47秒。
鈴木健二(YAMAHA YZ250X)
釘村忠(Honda CRF450R)
鈴木と釘村の差はなかなか縮まらず、二人のベストタイムでも約8秒の差が生まれており、釘村はスイッチした450に苦労した形と言えるだろうか。後半になるにつれて走り方をあわせこみ、2度の1番時計を釘村もマークしているが、17秒48差で鈴木に軍配。前橋は、序盤の勢いを固持できず、友山が後半4テストで3番時計を連発して3位表彰台をゲット。4位争いは熾烈で地元広島のIAルーキー熊本悠太が、内山裕太郎に7秒差をつけていたが、スタートでエンジンがかからないトラブルで10秒のペナルティが加算されて内山の勝利。
友山雅人(KTM 150SX)
内山裕太郎(YAMAHA YZ450FX)
鈴木は「久々のYZ250Xで、楽しかったですね。忠も450になって慣れていないこともありますし、その辺で差が出たんじゃないかな。450はやっぱり難しいですよ、450だけはモトクロスやってたライダーにとっても別格なので、簡単には乗りこなせないし、走り方も変えなくてはいけないんです。僕も昨年のSUGOでは、なかなか合わせられずに苦労しました。車重もあるので、重いですしね。
コースは下のクラスにとってはちょっと難しいかなとは思いましたけど、僕らにはちょうどいいくらいかなと。だいたい僕らが20分くらいで1周できた感じです。少し渋滞が生まれるところもあったのですが」とのコメント。
2位の釘村は「コースが難しかったですけど、僕の中では攻略できたと思っていたんですよ。でも、健二さんとベストラップで10秒近く差があって、これ以上どこでつめたらいいのか悩みました。今回走ってみて、450はラインや走り方を工夫すれば、当然ポテンシャルがあることはわかりました。なので、もうちょっと練習の仕方も変えていかないと、自分のものにしていけないな、と。でも、楽しみです、大阪でどの程度つめていけるかと」と鈴木との差を感じていた様子。
久しぶりのレースながら3位の友山は「友人が出るというので、今回は巻き込まれた感じなんですよね…。普段モトクロスでは乗っているんですが、とはいっても走り込みをするわけではなくて楽しく遊びながらといった感じ。腕があがるまで乗るなんてことはないので。まったく体ができていないので、1周目から体がつってしまうほどでした。バイクが150ccだったことで、軽さに助けられた感があります。テストの半分くらいは腕上がりしていて、クラッチやブレーキも握れなくて、ずっと1速で走ってました」と話す。「次出るなら、もう少し体を作ってきたいです」と。
IBクラス 石戸谷蓮が逆転勝利、IAでも4位に食い込むタイムで別格の走り
石戸谷蓮(KTM 250EXC)
IBでは、1周目からモトクロスIAの村上洸太が絶好調の走りで中間発表では他を圧倒するタイムを刻んでいく。ファステストラップで8分32秒とIAの友山と同等でレースは進行。2番手には石戸谷が食い下がり、こちらも8分40秒台を連発するものの、村上との差は広まる一方であった。
しかし、ラスト3周目にして村上はパンク。「完走できるか不安でしたが、なんとか走りきりました」とコメント。今回のタイム設定には余裕が生まれず、さすがに周回のあいだにパンク修理はできずに、そのままでラスト2周を走行。も9分台前半を維持したが、石戸谷が後半でもブレない走りをキープして追い上げ、結果15秒差で石戸谷が逆転勝利を納めた。
石戸谷は「今回JEC出れるようになったのは、ほたての集団のみなさまによるものです。この場を借りて、ありがとうございました。いい成績で終わることができて、とてもうれしい。大阪でも頑張ります」とコメント。結果的にIAクラス4位の合計タイムでフィニッシュしており、今後の石戸谷・村上の熾烈なタイトル争いが予想される。
ナショナルクラス 安定感の光る小田浩也が、JEC初参戦ながら優勝
小田浩也(YAMAHA WR250F)
ナショナルクラスの優勝は、小田浩也。IA、IBにくらべて周回数が1周少ない全日本選手権クラスの登竜門。序盤から中島章悟と小田の優勝争いに絞られたが、中島が3分のペナルティによって脱落。小田は「初のJECで、うれしい優勝ということで、できすぎの結果でした。マキシスタイヤがばっちりコースにはまった感じでした。次戦プラザ阪下は地元なので、こちらも頑張って走りたいと思います」とコメント。
ウィメンズクラス 菅原聖子が初戦を制し、2015チャンピオンとMXチャンピオンを下す
菅原聖子(YAMAHA YZ250FX)
全4周のレース中、全ラップにおいて1番時計をマークした菅原聖子が開幕戦を圧勝。前年チャンピオンの福田雅美は、リエゾンのガケ落ちで16分の遅着を喫しているが、テスト自体もタイムが伸び悩んだ。3位近藤香織はテストタイムでは2位だが29分の遅着で3位に。オンタイムで周回できたのも菅原のみであった。「オンタイムでまわってこれてよかったです。日頃の練習のおかげで結果にコミットすることができました」と菅原。注目の全日本モトクロスチャンピオン経験者、井手川まみは慣れないエンデューロレースにあわせられず、タイムオーバー。