全日本エンデューロ選手権 Rd.2岐阜 随一の「攻めて走る」難しさ。鈴木健二が2勝目を飾る

2019年は、例年からうってかわって2戦目を岐阜アルコピアスキー場で開催。コースレイアウトは、オンタイムエンデューロの権威であるオープンエリアオーナーの中嶋氏と、モンドモトオーナーの市川氏によって展開。両名の欧州における経験と知見を生かした2つのテストが組み込まれた。一見、両方ともスキー場のゲレンデ斜面を使った同じようなテストに見えるものの、実は個性が分かれている。1本目のテスト「CT1」は、速度域を高くし、後半にはウッズを追加。スピードがためされるものだった。2本目「CT2」は、ローリングコーナーをふくみ、テクニカルなもの。ただ、どちらも固い路面だが荒れていて、攻め込めば攻め込むほどリスクが増えるという難しさを内包していた。

IAクラス 1秒をめぐるハイエンドバトル、驚愕のラップで鈴木が釘村を下す

タイム計測の1本目CT1、1番時計5分19秒81を獲ったのは中島敬則だ。今戦よりYZ450FXへ乗り換えたばかりだが、パワーの必要なゲレンデレースではここぞとばかりにメリットが発揮される。おおよそ1〜2秒差で鈴木健二、釘村忠が続く。しかし、このタイムはこのアルコピアならではの「難しさ」によるものだった。鈴木、釘村共にレースが進むにつれてフィールド攻略を自分のものにしていき、実に2本目のCT1では共に2秒以上の短縮に。前戦広島ほどではないが、難しいコンディションにどこまで攻め込めるか、レース中にいかに攻めどころを発見するか、がポイントとなった。

釘村忠はこのRd2からCRF250RXへ乗り換え。中島とは対照的に、小排気量での戦いとなった。今シーズン早めに新マシンYZ250Fへ乗り換えている鈴木は、マシンとの相性は抜群でリザルトにも明確に結果が残る。しかし、釘村も負けておらず、250ccにも体を慣らしていきながら、スパートへ追い込んでいく形だ。中島は、そこまで攻め込むことができず、鈴木・釘村と離れた単独3番手へ。なお、今季有望な若手陣からは保坂修一が中島を追う形で4番手へつける。タイトルホルダー前橋孝洋は、ヒザの故障明けからまもなく5番手で走行。

鈴木、釘村の差はおおよそ1秒あたりを行ったり来たりする形。ともに様子を見ながら攻めこんでいくが、お互いラストラップで一気に引き離すことを考えていたという。二人のCT2のタイムは5分3秒台まで突入していたが、鈴木はまさかの5分切。4分59秒10と、圧倒的な集中力の前に釘村は歯が立たず敗退。鈴木の2連勝となった。

「普通に走る分には楽なコース。たとえばクロスカントリーだったら、疲れることはないと思うけど、オンタイムになると牙を剝く。精神的にも集中力が必要で、常に気を張っていないとどこに飛んでいくかわからない。外人勢だったら、こんなコースでも最初からタイムを出していくんでしょう。レース自体は短いけど、とにかく疲労しました。このコースは、ちゃんとした乗り方ができないとタイムを縮められないし、だから日本の競技レベルを上げるのにも役立つと思う。僕の評価はとても高いです」と鈴木。2回ほど、クラッシュしそうになりながらも集中力でつないだレースだった。

「低中速のおいしいところを使う450の乗り方とは、だいぶ違うバイクだっていうことわかっているんですが、抜け切れていないというか…。特にギアの使い方をレース中に少しずつならしていってタイムが出ていった感じですね。最後まで、探りながら攻めていって、僕も最終ラップはスパートかけたんですが、健二さんのタイムをみるとやっぱりなぁと。特にコーナーのつながりが、うまくできていなくて辛いレースになりました。今年はISDEに向けて体も作っていかなくてはいけないのですが、いまはだいたい60%くらい。特に筋持久力は、しっかり戻さないと」とシックスデイズを意識する釘村。次戦日高では、またマシンを変更する。

中島がブレーキを破損するレベルの大クラッシュでラストラップで4位へ。3位へ上がったのは、IAルーキーの保坂。早くも、IA初ポディウムを決めた。「今年から乗っているGASGASがすごく良くて。途中で体が疲れてきちゃったんですが、マシンに助けられた感じです。途中、(鈴木)健二さんが前に出してくれて、走りを見てもらったり、逆に健二さんの走りを見ることができて、とても勉強になりました。コーナーで開けていくポイントがだいぶ早いなという印象を持ちましたね」とのこと。もっと攻めれる、とさらなる飛躍を見据えて日高へ向かう。

IBクラス 圧勝の榎田諒介、来季のIA昇格をかけて競う

IBクラスは、モトクロス出身のエンデューロライダー榎田諒介が後続に1分以上の差をつけて勝利。それでも「IAクラスに換算すると、そこまで高い順位ではないので…。ラインをトレースできればタイムを狙えるのですが、外すとトラクションしなくてまったくダメ。段々スピードアップしていった感じです」とのこと。

2位は菅谷栄美。開けっぷりのいいライディングスタイルが、アルコピアの広大なフィールドにマッチした。

NAクラス 規格外、渡辺誉が余裕の勝利。2位には女性の菅原悠花が入る

IAレベルでも遜色の無いスピードをもつ渡辺は、CT2で5分39秒台という好タイム。全テストで1位をとって余裕のレースをものにした。IB換算で2位のタイムになる。「テストは下見できなかったので、苦戦しました。路面の荒れ方もひどかった」と。

「腕がパンパンになってしまって大変だった」という菅原悠花。クロスカントリーで常勝の実力は、オンタイムエンデューロでも通用。全テスト2番時計で、2位。

Wクラス 菅原聖子が2勝目

体幹のしっかりしたアスリート的な体系の菅原は、モトクロスライダーを退け全テストで1位の圧勝。乗り換えたばかりのCRF250RXとも相性がよさそうだ。「怖くて全然攻め切れませんでしたが、きっと多くのライダーも同じだったと思います、これが今の自分の実力なんだと思いました」とのこと。

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