全日本エンデューロ選手権 Rd.3 富山コスモスポーツランド2Daysエンデューロ「新生選手会がアンケート結果を反映、ライダー満足度の高い大会に」
2023年5月27日、全日本エンデューロ選手権第3戦のDay1が富山県コスモスポーツランドにて開催された。今年は開幕戦でスポット参戦の田中教世が優勝し、第2戦SUGOではスポット参戦の渡辺学がいる中、昨年のチャンピオン馬場亮太が2Daysを制覇している。
また、今年は釘村忠が選手会長に就任し、大会の満足度向上に取り組んできた。開幕戦と第2戦が終了した後に参加したライダー全員にアンケートを実施。その結果を元にルールやパドック、コース設定などを改善していく取り組みを始めた。アンケートの返答率は両大会とも6割ほどに登り、合計150通近くあったという。
今大会はその結果が反映された初めての大会となる。アンケート結果で特に多かったのは「走りごたえのあるコース設定」という要望だった。そのため今大会は近年のJECで簡単な設定になりがちだったルートの難易度が向上しており、昨年はIB、IA専用ルートだったヒルクライムがNBとNAにも使われ、IB、IAには新しい専用ルートが設定された。さらに全クラス周回数も多めになり、スピードとテクニックだけでなく体力や集中力も問われる大会となった。
昨年は1つだったテストも、モトクロスコースをメインに使ったショートテストと、ウッズを多く使ったエンデューロテストの2つが用意された。
釘村忠と馬場亮太が
2つのテストでベストラップを分かつ
天候は晴れ。路面は完全なドライ。さらに気温は高く風もなかったため、ライダーは暑さにも苦しめられた。テストはハイスピードで、ルートを含めほとんど休むところがなく、周回とともに体力が削られるライダーの希望通りのタフなレースになった。
トラブルなく走れれば各クラス1周ごとに7分程度の休憩時間を確保することができた。それでも1周目から遅着するライダーも見受けられ、これまでの大会よりも一際緊張感のある空気が流れていた。
IAクラスのトップ争いは昨年から数々の名勝負を生み出している釘村忠と馬場亮太の2人。その中でも昨年のここコスモスポーツランドでは1日8本のテストを走ってタイム差が1秒以内という激戦を繰り広げていた。
1周目のサイティングラップが終わり最初の計測となる2周目のテストは2本とも馬場がトップタイム。しかし3周目のエンデューロテストで釘村がスイッチを入れ、一気に5秒差ほどタイムを縮め、ここまでの負け分を取り戻した。
4周目のショートテストで釘村が転倒して10秒ロスすると、同じ4周目のエンデューロテストで馬場が大クラッシュし、20秒をロス。その後はショートテストは馬場、エンデューロテストは釘村という鍔迫り合いが続いた。
また、今大会は今シーズン初めて榎田諒介が参戦。釘村、馬場に次ぐ好タイムを連発し、4周目のショートテストではこの日唯一人、馬場を抑えてトップタイムを叩き出したが、その直後にマシントラブルでリタイヤとなってしまった。榎田の後、3番手についたのは保坂修一。続いて飯塚翼、太田幸仁、大神智樹……。酢崎友哉は3周目でブレーキフルードのホースを破損し、リタイヤ。
釘村忠
「テスト16本は疲れましたね! 今日は下見もちゃんとできたし、体もよく動いて乗れている感覚がありました。ワンミスが大きく影響するので、序盤は探り探り走っていたのですが、3周目にプッシュしてみたら下りでハードブレーキングしすぎてリアが滑って転倒してしまって……。すぐ後に亮太も転んだみたいで、トータルで16秒くらい差が開いたので少し安心していたら、じわじわとその差が詰まってきたので気を引き締めました。最後まで集中力を切らさずにプッシュし続けることができ、初めてちゃんと亮太に競り勝てた気がしています」
馬場亮太
「JECで初めて大クラッシュしてしまいました。エンデューロテストのフラットなところにある岩にぶつかって前転しました。ところが転んだ後のエンデューロテストで今まで走ってなかったラインを走ってみたら、タイムが5秒くらい縮まったんです。そこで気持ちを切り替えてプッシュしすぎず、明日のレースに向けてラインを探しながら走っていました。後半は疲れてしまって腕上がりして、抑えが効かなくて小さいミスをたくさんしてしまいました。それでもいいところもあってタイムは落ちてなかったので、新しいラインがしっかり噛み合えば明日はもう少しタイムを出すことができると思います」
IB高橋吟がオールベストラップ
第2戦SUGO大会を2日間オールトップタイムで完全勝利した驚異のIBルーキー、高橋吟が、ここ富山でも記録を伸ばした。14本のテストすべてでトップタイムを飾り、またもや完全優勝。2位には開幕戦で優勝した森慎太郎。3位にはランキングトップの星野利康が入った。
NAクラスでは加藤浩介が最後のエンデューロテストを除いてトップタイムを獲得し、優勝。NBクラスは大西健太郎がやはり1つのテスト以外をトップタイムで優勝した。Wクラスは保坂明日那が第2戦での怪我が完治せず欠場。中日本選手権から田中亜実がNBクラスとダブルエントリーし、ラストラップまで力走するも遅着の合計時間が35分に達し、タイムアウトとなってしまった。
レース終了後には釘村がクラスごとに出場ライダーを集め、選手会ミーティングを実施。NB、NA、IBともに厳しいレースではあったものの、概ね好評だった。NBクラスでは翌日の一周減も検討されたが、多数決で否決され、予定通り7周となることが決定。そのためNAクラス、IBクラス、 IAクラスも減周はなし。その他にもナショナルクラスの整備サポート規則導入についてやパドックの導線についてなど有意義な話し合いが設けられた。
明日も天候は晴れ予報で、過酷なレースになりそうだ。