JEC Rd.3 チーズナッツパーク2デイズエンデューロDAY2 急遽手を入れられたコース、天候に翻弄された2日間
DAY1のコンディション悪化によるコースカットやレース中断、タイムオーバーの続出を受けてレース主催側は緊急対策に奔走。DAY2の前夜にも雨が降るとの予報も鑑みて、チーズナッツパークのコースレイアウターと協力し、最善策を探った。
夜が明けて宿から再びライダー達が戻ると、一段と雨が染みこんだコース路面と強風によって崩れてしまったいくつかのテントが散見された。開幕戦広島を彷彿とする過酷なレースが2日目も始まった。午前のNB・ウィメンズ・エンジョイクラスは難所をカットしたスペシャルテストのみでレースをおこなうこととし、午後のIA・IB・NAクラスはDAY1のNB・ウィメンズ・エンジョイクラス向けルートと、同じく難所をカットしたスペシャルテストが設定された。ルート、テストともに丁寧に検分され、轍が深くなりそうな箇所は積極的にコース幅を拡げるなどの対策がとられた。
IA マディ得意な保坂・勝山がDAY1に続き馬場に迫り、堀越がこれに続く
今年は下見周がなく1周目から計測開始となるIAクラスだが、今回はテストの変更点が多くリスクが高いことから、特別に1周目は下見走行とすることが告知された。日本の最高峰クラスの面々がコース状況を確認しながら周回すると「僕らにはイージーでも、NAクラスでは遅着が出てしまうと思う。依然としてコンディションは良くない」(太田幸仁)とのコメントだった。
しかし収拾がつかないほどに荒れてしまったDAY1とは違い、コース切り替えの尽力が功を奏して2周目から全員フルアタックしていく。序盤からトップタイムを出したのは、やはり馬場亮太。コースカットされたこともあって、前日よりも1分ほど速い4分30秒をマークした。これに対し、勝山聖が4分36秒、保坂修一は4分41秒と続いたが、馬場が着実にリードを広げていく展開となった。また、今大会IAで唯一2スト125ccを駆る堀越秀鷹が、4分39秒とトップ争いに絡む勢いを見せる。
馬場が隙を見せたのは、全5ラップ中4ラップ目のみ。「嫌な根っこが見えるので」とルート上でマシンを止めてテストの難所を下見したところ、その難所で転倒。それでも4分34秒で2番手タイムとリカバリーの巧さも見せつけた。この4周目に勝山がトップタイムを奪ったのを除き、それ以外の周回は全て馬場が一番時計を記録し圧勝。2位保坂、3位勝山とDAY1と同じトップ3の顔ぶれとなり、2デイズの総合順位も変わらずだった。堀越は勝山に肉薄したものの4位でフィニッシュ。完走したライダーは、全員オンタイムだった。
馬場亮太
「1回転倒してしまって6秒のロスはあったものの、テスト走行自体は非常に面白く、楽しむことができました。コースは徐々にラインが固まり、ベスコンに近い状態になりましたが、深い轍や露出した石など、変化に富んだコンディションでしたね。昨日のテストでは2度の転倒と1度のエンストがありましたが、今日はテストでの転倒1回のみに抑えることができ、それ以外に大きなミスはなかったと感じています。
4~5分の短いテストでも、ヨシカズ(保坂)が数秒差に迫ってくるため、毎回もっと差を広げなければならないというプレッシャーを感じています。無理な走行は避けつつ、アクセルワークでバイクを高い位置でコントロールし、エンジンの回転数を落とさないよう、特にウッズ区間ではスムーズな走りを徹底しました。下見ラップの1周目は全くリズムに乗れず、轍でのスタックや転倒を経験し、「今日は体が動かないかもしれない」と不安を感じましたが、結果的にそれが良いウォーミングアップとなり、本番ではしっかりと走れましたね」
保坂修一
「Day1、Day2ともに2位という結果で、総合でも2位となりました。またしても50秒もの差をつけられてしまい…正直、だいぶ悔しいですね。トータルで見ると50秒、内訳としては今日は30秒、昨日は26秒ですから。
昨日は3回も1番時計を記録できたのですが、今日は残念ながら1回も取ることができませんでした。自分の走りがそのコンディションに合っていなかったのか…反省すべき点です。決して調子が悪かったわけではなく、普通に走れてはいたのですが、単純に周りのライダーが速かった。今の自分には、そこに追いつくための伸び代が足りなかったということなので、そこをしっかりと強化していきたいと考えています。
次のレースは北海道の日高ですが、得意なラウンドなのでぜひとも出場したいです。何が足りないのか……根本的には圧倒的にスピードが不足しているのだと思います。ひたすらモトクロスの練習あるのみです」
勝山聖
「4本目のテストでは1番時計を記録することができました。僕のベストラップは4分33秒でしたが、馬場(亮太)選手は最後のテストで4分26秒を叩き出しており、7秒の差がありました。しかも、最も路面が荒れた最終盤でベストタイムを更新してくるあたり、さすがだと感じます。トップとは常に5秒から10秒の差があるという現実を突きつけられました。良い感触はあったものの、正直なところ、心の底から喜べるというわけではありません。
大排気量の500EXCで参戦しているのですが、泥が深いセクションではそのパワーに大いに助けられました。高いギアを選択し、半クラッチを巧みに使いながらパワーで進んでいくのは、非常に楽でしたね。ウッズの中においても、500ccというと重くてパワーが急に出るようなイメージがあるかもしれませんが、実際はトレールバイクに近いフィーリングで、極低速域でも扱いやすいんです。半クラッチを当ててアクセルを全開にすれば、モトクロッサーのようなレーサー然としたパワーが炸裂するので、低速から高速まで非常に幅広く、僕にとっては本当に扱いやすいバイクだと感じています。
ハードエンデューロでの経験は、こういったタフな場面での走破力に確実に活きていると実感しています。普段から山で遊んだり、ハードエンデューロイベントのマーシャルとしてコースレイアウトを考えたりすることも、全てがライディングスキルの向上に繋がっているはず。オンタイムレースを走るライダーの方々も、ハードエンデューロは絶対に経験しておいた方が良いですよ。今日のレースでルートが一部カットされてしまったのは、少し残念でした」
IB・NA・ウィメンズ 延原、尾張がトップを分け合う結果に
DAY1は遅着によるペナルティに翻弄されたIBクラスだったが、このDAY2ではトップ14名がオンタイムでレースを終えている。1位に輝いたのは昨年NAクラスを圧倒的な強さで制した延原由祐で、5本中3本のテストでトップタイムをたたき出した。2位には、DAY1を優勝した広島の尾張展央。3位に島田優が入った。総合順位では尾張が優勝を手にした。
延原由祐
「タイム自体は、昨日も今日も各テストで1番時計を記録できていたと思います。今日は転倒もあっていくつかタイムを落としたセクションもありましたが、それでもいくつかのテストではトップタイムは出せました。
昨シーズンまでは比較的順調に来ていましたが、今シーズンは開幕戦、第2戦とマディコンディションに苦しめられ、遅着が続いています…ようやくJECの厳しい洗礼を受けた、という感じでしょうか。何が足りないかと問われればルート攻略です。ルート攻略が非常に難しく、ミスが増えて遅着に繋がってしまいます。もっとエンデューロ特有の、より実践的な練習を積まなければならないと痛感しています。今回のレースは正直なところ今までで一番辛かったかもしれません。でも、レースが終わってみれば「楽しかった」と思えるのが、JECの魅力であり、醍醐味なのだと思います。次戦の日高はより自然に近いワイルドなコースなので、そこに向けてさらに自分を鍛え上げたいです」
尾張展央
「広島勢が好成績を収めているのは……日頃からテージャスランチ(開幕戦が開催された広島のコース)で練習を重ねていることが、良い結果に繋がっているのだと思います。いつもグッドタイムスレーシングのメンバーや、NAを優勝した河原廉弥と一緒に練習していて、かなりハイペースな環境で、山の中のハードなセクションを想定したスピード練習を積むことができています。今回のような雨の難しいコンディションは、むしろ得意としているところなので、それが良い方向に出たのだと思います。雨自体は決して好きというわけではないのですが(苦笑)」
島田優
「レース後にリザルトを確認したところ、トップとは40数秒の差で、昨日の1分の遅刻がなければ総合優勝の可能性があっただけに、そこが本当に悔やまれます。これぞオンタイムレースの厳しさ、面白さだと痛感しました。
今日のレースでは、とにかく丁寧な走りを心がけました。チーズナッツのようなテクニカルなコースは、特にレース後半になると路面も荒れてきて、周回遅れのバイクも多くなるため、非常にタフな展開でした。最終周に一度転倒してしまい、ハンドルを曲げてしまった影響で、最後は思うように攻めきれなかったのが反省点です。それでも、オンタイムでしっかりと走り切ることができたので、昨日の反省は次に活かせると感じています。
次戦については、今のところ東日本の勝沼のレースを予定しています。全日本選手権に関しては…日高のレースも非常に魅力的で、一度は走ってみたいという気持ちはあるのですが、日程の調整や、および車両(ナンバー付きバイク)の準備の問題など、クリアすべき課題がいくつかありますね。久しぶりの全日本選手権への出場でしたが、自分が思っていた以上にIBクラスのレベルで戦えるという手応えはありました。せっかくの機会ですので、またレベルの高いライダーたちと競い合えるレースに出場できたら嬉しいです」
NAクラスも、ほとんどがオンタイムでレースを終え波乱の少ないレースとなった。トップは昨日も優勝を手にした河原廉弥、2位に山口慧、3位に大田垣良一。
河原廉弥
「広島のチームメイトたちとは、まるで身内のような親しい関係で、毎週のように一緒に練習に励んでいます。今日のコースコンディションについてですが、正直なところ、昨日があまりにもハードだったため、今日はまだ走りやすかったと感じています。私はテクニカルなセクションがあまり得意ではないので、テストに臨む頃には疲労困憊で腕もパンパンの状態でしたが、今日はしっかりと準備をしてテストに臨むことができました。
開幕戦では3位という結果でした。私自身のバイク歴はまだ4年程度ですが、それだけ集中的に練習すれば、NAクラスでチャンピオンになれるということを証明できたのではないかと思います。もちろん、そのためには本当に厳しい練習を積みました」
ウィメンズクラスもDAY1に引き続き木下夏芽が圧勝。
木下夏芽
「2回目のオンタイム挑戦でしたが、今回は本当に転倒が多く、苦戦しました。テスト走行で谷に落ちてしまってからは、まるで負の連鎖に陥ったかのようでした…。それでも、今日は3回の転倒で済んだので、まだマシだったのかもしれません。転倒の原因は、攻めすぎたというよりも、足つきが悪かったり、滑ってバランスを崩したりと、バイクの挙動に翻弄されてしまった場面が多かったです。
3回のオンタイムレースを経験して痛感したのは、マシントラブルへの対応力の重要性ですね。今日はマディコンディションでクラッチに泥が詰まり、切れなくなってしまうアクシデントがありましたが、そういった状況でのノウハウがなければ、何もできずにただ進むしかありません。バイクに関する知識がいかに大切か、身をもって学びました。ラジエーターキャップが開けられず、冷却水を補充できなかったりもして…結局その場は諦めましたが、何事もなくレースを終えられたのは幸いでした」