JEC Rd.3 広島テージャスランチ 完走率55%、マディに翻弄されるなか渡辺学が快勝

2024全日本エンデューロ選手権の第二戦は、例年開幕戦がおこなわれてきた広島県テージャスランチで開催。前戦が2デイズ大会のためRd.1〜2という形になり、この広島大会は実質Rd.3ということになる。スペシャルテストは名物のテージャス山を越えて沢へ下ってからスタート地点へ戻ってくるエンデューロ的なテスト(便宜上エンデューロテストと呼ばせていただく)と、ミニモトクロス場から牧場部分のワイドな景観が魅力のスペースを利用したテスト(クロステストと呼ぼう)の2つで比較的走りやすいものの、手強くしっかりライダーたちを疲労させるルートが用意され、オンタイムエンデューロらしいコース。しかし、天気予報通り前夜から朝まで豪雨が降り注ぎ、赤土と粘土層で濡れるととても手強いことで知られるテージャスランチの本性を顕した。IAですらたった12名しかオンタイムで回ることはできず、全体の完走率は55%。晴れていればそこそこ優しい設定だと思われた今大会だったが、タイム、体力、マシンのマネジメント能力など、エンデューロライダーとしての本質が問われるレースになった。

 

IA 鉄壁の馬場亮太が陥落、激マディを制したのは渡辺学

2022、2023年のチャンピオン馬場亮太は、パワー&トルクに溢れるヤマハYZ450FXに乗り換えたことで開幕戦を圧倒的な安定感で制し、差をさらに拡げにかかったかのように見えた。今季はJECにフル参戦しているクロスカントリーレースの覇者渡辺学、ここ広島で昨年優勝した田中教世をも撥ねのけそうな勢いだったのが、この広島では弱みを見せることになってしまう。

前日に下見をしていないことから序盤のペースが上がらないのでは、と思われていた馬場は1本目のテストでは1番時計を奪って快調な滑り出しを見せた。ところが2周目から渡辺の猛追が始まり、4分弱のエンデューロテストでは1周目より10秒近くタイムを削って早くもトップの座を奪取。二人は熾烈なトップ争いを繰り広げることに。一方、昨年の馬場のライバルであった釘村忠は振るわず、3〜4番手タイムをマークするにとどまり全体でも3位をキープ。昨年の広島で優勝した田中教世は1周目のテストを2−1と好成績で回ったものの、2周目でスプロケットに障害物をヒットしてチェーンが外れる症状に見舞われリタイアとなった。

雨脚は午前中の間に次第に弱まり、荒れるコースと相まって状況は刻々と変化していった。スリッパリーなだけであった序盤とは違い、どんどん重土がライダーを苦しめていき、いよいよテスト内に渋滞が頻発する事態に。渡辺はクロスカントリーで培った渋滞さばきのうまさと、モトクロッサーYZ250Fの軽さでぐいぐい成績を伸ばしていくが、逆にライバルの馬場は少しずつそのタイムを落としていった。勝負がついたのは6周目、馬場はエンデューロテストでスタックしてしまい2分弱のロスを喫してしまう。凶悪なマディコンディションはその後もライダーを苦しめ、テスト内ですら馬場や釘村がマシンを押す羽目になるほどだった。渡辺はタイム差を考慮して安全策を講じ悠々と勝利を手にした。

マディに打ち克ったのは渡辺だけではない。2位に入ったのは保坂修一である。オープニングラップこそ振るわなかったものの、持ち前のマディでの安定感を発揮して前半は4番手で走行。そして後半にはミスした馬場と釘村を尻目に2番手へジャンプアップ。トップタイムも2本マークするなど文句なしの入賞であった。

渡辺学

「亮太(馬場)が上手なのと、4スト250に乗った教世くん(田中)が速いのはわかっていたので、ひとまず様子見で1周目は走りました。そしたら2周目で教世くんのバイクが止まってしまって、これは亮太との勝負になるかなと。2周目はコースもだいぶ覚えてきたので結構攻めて走ったんですよ。それで10秒くらいリードできたので、このくらいで走れば勝てるだろうなと目算が立ったんですね。ところが3周目にだいぶコースが荒れてきて、これだと450に乗る亮太は辛いだろうなと思いました。自分もミスしないだろうし、ペースを守っていれば十分だろうと。そのうちに亮太がミスして、差が2分30分くらいに開いちゃったんですよ」

保坂修一

「2年ぶりくらいの2位で嬉しいですね。学さんにも勝ちたかったですが、マディに強いということが証明できてよかったです。マディが得意なんで、コンディションが悪いほどモチベーションが上がるんですよね、それがよかったのかもしれません。今年の上位メンバーは層が厚いから、このメンツで勝てたら俺ヤベェじゃん! ってテンションあがちゃって(笑)。みんな沈んでる中、すごく楽しく走れました。何事も無かったわけではなくて、むしろ1周目のエンデューロテストでぶっ飛んで最初からハンドル曲げちゃったんですよ。落ち着け落ち着けって思いながら走りましたね。この調子で、今年こそチャンピオンまで狙いたいです」

馬場亮太

「正直、3位でも上出来かなって思いますね。みんなタイム伸びないだろうなって思ってたんですが、学さんだけめちゃくちゃ速かったですね。スリッパリーなヒルクライムとキャンバーでは本当に登れないところがあって、一度他のライダーに押してもらったくらいです……。6周目くらいにミスして2分ほどロスしちゃいました。負けたのは去年の富山以来です。悔しいと言うより、完走できてうれしいって思ってます。ほんとリタイアを意識する瞬間もあって、バイクも水吸っちゃったのか調子悪かったですし。大変でした」

 

IB リアブレーキを失いながらも圧勝の出口隼飛

開幕戦も圧勝だった出口隼飛だが、この広島大会もモトクロス国際A級、クロスカントリートップライダー経験者としての実力を見せつけた。1周目でリアブレーキにトラブルを抱えてしまったことで苦戦を強いられたとのことだが、14のテスト中、実に12のテストをトップタイムで走りきり、2位田中大貴と2分38秒差で圧勝。田中も3番手とは大差をつけたものの自身も語るとおり相当に高い壁が1位と2位の間にはありそうだ。

3位は2023年G-NET(全日本ハードエンデューロ選手権)のチャンピオンである原田皓太が入った。ハードエンデューロライダーならではの難所テクニックと鍛えているスピードの高さが功を奏した。

出口隼飛

「1周目からリアブレーキが抜けちゃって、ルートがとてもきつかったです。リアブレーキのかわりにエンジンを切ってエンブレ使って下ったりしてましたけど、この調整がすごく難しくて参りました。自分に負けないように、応援してくれる人にわざとオーバーリアクションしたりして、自分を鼓舞しながら走りましたね」

 

田中大貴

「SUGOはエクストリームテストのおかげみたいなところがありますけど、今回もマディのおかげみたいなところありますね。今日はリアタイヤにタブリスを入れて、空気圧を0.1kgまで落としたのが勝因だと思います。すごくグリップしてくれました」

 

原田皓太

「今日はとてもいいハードエンデューロ日和って感じでしたね。コースも難しくて、なかなか攻めごたえがある楽しいレースだったんで、3位に入ることができました。ハードエンデューロやっていればこのくらい走れるようになるんで、みなさんもぜひハードエンデューロやりましょう!」

ウィメンズクラスは残念ながら全員完走ならず。NAは尾張展央が開幕の勝者である延原由祐をわずか19秒差で下して勝利、NBは樽谷朋佳が優勝となった。

 

IAクラス ポディウム

IBクラス ポディウム

NAクラス ポディウム

NBクラス ポディウム

クラブチーム ポディウム

Follow me!