JEC Rd.6 超接戦、ごくわずかに馬場亮太がリードか
ついに最終戦を迎えた全日本エンデューロ選手権、舞台は秋の大阪へ。2デイズ(2ラウンド)の大阪大会で渡辺学が1勝すればチャンピオン決定という接戦で初日を迎えることに
駅前エンデューロ復活
大阪のプラザ阪下で開催されていた全日本エンデューロ選手権大阪大会は、2016年を最後に今年まで休止されてきた。河内長野駅の目の前にあるプラザ阪下で開催されるとあって、コンパクトながらも日本随一の都市型エンデューロとして知られており、丸太やタイヤプールなど阪下ならではの障害物を交えた独特の雰囲気が人気を博していた。
新体制の全日本エンデューロ選手権が始まり、この大阪大会が今年最終戦として復活。中日本エンデューロ選手権に関わってきた実績を持つMCSクリタ太田真成がコースレイアウターとして活躍し、クロステスト1本、エンデューロテスト1本のオンタイムエンデューロトラックがプラザ阪下に出現。ルート長こそ長くはとれなかったものの、承認・NB・ウィメンズクラスを午前中に、NA・IB・IAクラスを午後にまとめることでほとんどのライダーにクリアラップがとれるオンタイムらしい競技スタイルを維持することができた。天候は曇り、長く続いた夏日を引きずった結果、過ごしやすいエンデューロ日和となり、河内長野の竹藪にエキゾーストノートがこだました。
IA ここにきて馬場亮太が日本人離れしたスピードを発揮
IAクラスは前戦の北海道大会で馬場亮太が欠場したことから、渡辺学がリードを拡大してタイトルをほぼ確実なものにすると思われていたが、釘村忠が気を吐き2ラウンドを渡辺と分け合う形となった。その結果、この大阪大会では渡辺が1勝でもとればチャンピオン決定と有利に変わりはないものの、釘村・馬場は1ラウンド先取することで自力優勝も見えてくるという状況である。3名共に事前の意気込みが高まり、馬場・渡辺は新型YZ250FXをこの決戦の場に持ち込んできている。対して、釘村はエンジンパワーに勝る2スト300ccのTE300でチャンピオン奪還に挑む。また、ランキング争いには関わっていないものの、田中教世も伏兵としてチャンピオン争いをかきまわしにかかる。
プラザ阪下のコースはサンド質で気持ちのいい路面だが、太田の手によって無数に設定されたコーナーには周回ごとにどんどん深い轍が刻まれていった。一般的には轍が増えることで難易度は上がるものの、トップライダーにはスピードをのせやすい小さなバンクとして機能する。本場ヨーロッパのように、この轍をきっかけとしてタイムをどこまで削っていくことができるかが、勝敗を決する大きな要点だ。
このタイムの削りあいに馬場亮太は圧倒的な実力を見せつけた。乗りこなすのが難しいYZ450FXで参戦した開幕戦SUGO大会と同様に、他のライダーをまったく寄せ付けることがなかった。エンデューロテストを例に取ると、1ラップ目は2分55秒、3ラップ目に5秒近くタイムを削ると、それに飽き足らず後半は2分46秒まで短縮。結果的に1日で10秒弱のジャンプアップをしていることになる。釘村忠が2ラップ目に1度ベストラップを奪った以外は16本のテスト中、実に15本のテストでベストラップをマーク。まさに圧巻の勝利だった。2位釘村忠は馬場から合計タイムで50秒遅れ、3位渡辺とは接戦を繰り広げて結果的に6秒の僅差となった。
この結果を受けて、最終ラウンドでは馬場・渡辺ともに優勝したら無条件でチャンピオンへ。釘村が優勝した場合は馬場が3位以下であればチャンピオンという超接戦になっている。ただし、最終ラウンドである大阪大会デイ2はまったく同じトラック。渡辺、釘村が突破口を見つけられるか否かが鍵となりそうだ。
馬場亮太
「想像していたより後ろを引き離せました。どのくらい二人が追い上げてくるか気にして走っていました。まだ明日は1テストにつき1秒くらい詰められる余裕を残しているんじゃないかと思います。先週から体調を崩してて、今日は1周目から目があまり見えていなくて全然走れないなと思っていたんですよ。でもそれでトップタイムを出せたので、もう少し頑張ればいけるだろうと思ったんです。2周目は1度エンストしてしまって釘村さんにトップタイムを奪われてしまったんですが、それだけで済みました。去年2スト125ccでどうやったら戦えるかどうやったらタイムを削れるかって考えながら走っていたのですが、その経験が生きているなと思います」
釘村忠
「なんで亮太があんなに速いのかわからないですね。頑張るしかない。今日、最後の周に亮太の走りを観察してたんですが、そしたら1.5秒削れたんですよ。ラインとかじゃなくて、走りです。亮太の走りを意識して走ったら縮まったんですね。ベストタイムで1.5秒くらいしか離れていないんですが、亮太も1秒くらい余裕があるんじゃないかなと思うんです。ということは2.5秒くらい削らないといけないのか……。とにかく今できることは、身体を休めて明日のイメージをつくって臨むだけです」
渡辺学
「毎周セッティングを変えながら走っていました。今日しっかりセッティングは出し切れたと思います。あとは走り方かな。亮太はミスらないと思うんだけど、もしミスった時に備えているとも思うので、忠には勝っておきたいです。クロステストで亮太との差が出やすいので、もう少し詰められるようにコースを見ておくべきですね。僕のバイクのセッティングだとバイクを倒せない轍が多くて、その辺が課題かな」
IB CRF250L×岩嵜優が全テストでトップタイム
北海道大会でタイトルは決定しているIBクラス。ある程度トップ3に入ってくるライダーも決まってきたシーズンだったのに最終戦で思わぬ伏兵が登場した。なんと今回のIBクラスはトレールバイクのCRF250Lを駆る岩嵜優が全テストをトップタイムで優勝。もちろんIAクラスでも通用するタイムであり、関係者を沸かせた(なお、北海道大会でもIAクラスで世利和輝がCRF250Lで総合9位に入っている)。2位は1分42秒離れて山口智、続いて3位に田中大貴が入賞。
岩嵜優
「店長(編注:岩嵜は大阪のバイクショップニュートンの店員)が大阪大会出るのにCRFを貸してくれるって言ってくれたんですが、モトクロッサーじゃなくてCRF250Lだったんですよ。騙されました(笑)。Lはいいですね、オンタイムエンデューロにマッチしてたと思いますよ。JECは中日本大会に1度出たきりで、2度目です。まだルールはよく理解してないですね。先週は全日本モトクロスの最終戦IA1クラスに出て、トップライダーに3ラップくらいされたばかりです」
ウィメンズクラスも、北海道で松本亜希子がタイトルを決めているが、この大阪大会デイ1では田中亜美が1分32秒という僅差で勝利している。