全日本エンデューロ選手権 Rd.5 日高ツーデイズエンデューロ DAY1「4年ぶりに開催された奇跡のレースに236名がエントリー」

2023年9月16日、北海道日高町にエンデューロライダーが集結した。地元北海道はもちろん、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、九州から……さらにはカナダ、オーストラリア、イギリスからも。そう、全日本エンデューロ選手権第5戦、日高ツーデイズエンデューロが4年ぶりに復活したのだ。

日高ツーデイズは全日本選手権でありながら、FIMエンデューロ準国際競技会となっており、FIMライセンスを持つ海外のライダーも参加することができる。今大会には、4回目の日高となるレクシィ・ぺチョウ(カナダ)の他、オーストラリアのレジェンド、ジェンマ・ウィルソンがIAクラスにエントリー。さらにNAクラスにスティーブ・パーク(カナダ)、NBクラスにローレンス・ハッキング(カナダ)とサイモン・ペーヴィ(イギリス)、Wクラスにミア・ハッキング(カナダ)、合計6名の海外ライダーが参戦した。

エントリー総数は全部で236台「コロナ禍によって休止していた3年間、日本のエンデューロに足りなかったのは日高だったのだ」とでも言わんばかりに盛大な大会となった。特に承認クラスだけでも77台が集まり、初めての日高というライダーも多く見られた。これはエンデューロに限った話ではないし、日本に限った話でもない。この3年間で多くの人が「人生いつなにが起きるかわからない。『いつかやりたい』ではダメなんだ」と感じた結果なのだろう。

日高ツーデイズエンデューロを運営する日高モーターサイクリストクラブ代表の神保一哉氏は「全国各地から懐かしいみなさん、そして初めて日高に参加されるみなさん、ようこそおいでくださいました。(中略)思い返せば30年前になります。1993年、国内で初めてオンタイムエンデューロを開催し、極めてお粗末な結果に終わりました。しかし、その時の我々の思いは何かというと、国内でもエンデューロと名のつくレースはたくさんありましたが、ヨーロッパで発祥したこのエンデューロ、世界各国と同じ土俵でレースをやるべきだろう、というものでした。(中略)私どもの思いとは別に、地域のみなさん、そして関係各位のみなさんのご理解を得て、この大会が成立しています、延べ人数で250〜300人のスタッフ、係員がコース全体に散らばります。精一杯のみなさまの健闘を期待したいと思います」と開会式で挨拶を述べた。

レース前々日の木曜日に、日高町を大雨が襲った。コースの至るところにぬかるみが生まれ、川は増水した。それでもレース前日の金曜と、DAY1の土曜日は晴れ。増水の影響で一部コース変更はあったものの、大きな混乱もなく、レースはスタートを迎えた。

加熱するチャンピオン争い
釘村、馬場、保坂が三つ巴

第4戦九州山都エンデューロが台風の影響で中止となり、第3戦終了時のポイントランキングのまま、この最終戦を迎えた。釘村忠が馬場亮太に対し4ポイントをリードしてランキングトップを走っている。

日高ツーデイズはルートに公道を使用するオープンエンデューロのため、参加車両にはナンバー登録と保安部品の装備が求められる。釘村は今季乗っているRR2T300からRR2T250へチェンジ。馬場もYZ125XからWR250Fへ。排気量や特性の異なるマシンでタイムを出すスキルが求められた。

スタートしてすぐの日高高原スキー場のゲレンデを使用したクロステスト、トップタイムをマークしたのは馬場。続いて釘村。しかし続くミシマエンデューロテストでランキング4位の保坂修一がトップタイムを叩き出した。ミシマエンデューロテストは狭いウッズの速度を出すのが難しいテクニカルなレイアウトで、根っこや石がいやらしく、ライン取りがキモとなる。

3つ目のテストはジュナイト。全日本ハードエンデューロ選手権G-NETの「HIDAKA ROCKS」でも使われる河川敷を使ったエクストリームテストだ。NB以下のクラスではコースインしてすぐのヒルクライムで多くのライダーが失敗し、大きなタイムロスを喫し、勝負の分かれ目となった。ここでは馬場、保坂がワンツー。3番タイムには大神智樹が入り、釘村は4番手に。

ここでタイムを確認し気合を入れ直した釘村だったが、焦りからか4つ目の西山エンデューロテストで崖落ち。5番タイムに沈んでしまう。ここでは再び保坂がトップタイムをマークし、馬場は2番タイム。IAはさらにゲレンデ、西山、ゲレンデと3つのテストをこなし、馬場が保坂、釘村に30秒以上の差をつけて優勝。

2位は保坂。トップタイムを2つマークし、去年の最終戦ルスツDAY2以来のベストリザルトタイ。釘村は最後のゲレンデテストでこの日初めてのトップタイムをマークするも届かず、翌日へ希望を繋ぐ形となった。

なお、レクシィはIAクラス12位、ジェンマは17位でレースを終えている。

昇格を賭けた最後のレース
IB〜NBクラス

ランキング上位3名が来年IAクラスへの切符を手にすることができるIBクラス。欠席した広島大会以外で全勝中の高橋吟をはじめ、ランキング2位の星野利康らIBトップ陣は最初のゲレンデのクロステストで、切れていたコーステープに翻弄され、ミスコースしてしまう。

しかし高橋はこれまでもIBクラス規格外のタイムを叩き出しており、この日も例に漏れなかった。なんと7つのテストの合計タイムはIAクラス3位の釘村と1秒以内の差に収まっており、当然ながらIBクラス優勝。

2位には2番タイムを4回出して最初のゲレンデのミスを挽回した星野、3位にはゲレンデテストで2番タイムを出した藤村昂矢が入った。

NAクラスでは地元北海道の羽田真吾が優勝。トップタイムを4回出し、2位に50秒以上の大差をつけた。2位の田中大貴はジュナイトでトップタイムを出し、他で大きく落とさなかったのが勝因か。3位はやはり北海道の沖中祐輔、西山エンデューロテストでトップタイムを出している。

NBクラスの優勝も北海道勢だった。荻野正彦はジュナイトで大きくタイムロスするものの、2回のゲレンデテストでトップタイムを出し、クラス優勝。2位に入った三浦敦は逆にジュナイトのみトップタイム。3位にはミシマエンデューロテストとジュナイトで2番タイムを出した井上彬博が入った。

Wクラスではゲレンデ、西山エンデューロテストと保坂明日那がトップタイムを出し、レースをリードするも、ジュナイトのヒルクライムに捕まり、15分近いタイムロスを喫してしまう。小径ホイールのKX112で、エクストリームテストに挑んだ。ジュナイトでトップタイムを出したのはハードエンデューロにも積極的に参戦する和田綾子。しかしクラス優勝したのは西山エンデューロテストでトップタイムを出した他、残りのテストを2番タイムで通過したミア・ハッキング。2位に和田、3位に保坂となった。

やはりコースは大雨の後の過酷なコンディションで、いたるところにマシンを飲み込む沼地があり、多くのライダーが満身創痍でパドックに戻ってきた。ナンバーやリフレクターを失った者、エンジンが不調を訴えた者など。明日のレースを走るために夜を徹して修理する者がいれば、修復不能で明日のレースを走れない者もいる。そうしてエンデューロライダーたちはそれぞれの夜を過ごす。

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