JEC Rd.4 中日本2DAYSエンデューロDay1「釘村忠がニュータイヤを導入、安定感を増した馬場亮太に隙はあるのか」

JEC(全日本エンデューロ選手権)の第3戦が富山県コスモスポーツランドにて開催された。開幕戦・広島、第2戦・SUGO2DAYSに続き、今大会はラウンド4、ラウンド5を担う2DAYS開催となる。

今年はマディのレースが続いていたJECだが、今大会は梅雨時期の開催にも関わらず曇りでドライコンディション。富山市は最高気温29度を記録し、熱中症も心配されるレースとなった。

コースはスタートしてルートに入るとすぐに2.2kmのモトクロスコースとウッズを繋いだテスト。それを終えると後半のルートに入り、一周を終えるレイアウト。IAとIBクラスのみルート上に特別な難所が設けられた。

IA:馬場の登場が、全体のレベルを上げる起爆剤に

最高峰のIAクラスで過去4度のチャンピオンに輝いている釘村忠は、ここまで3ラウンドで馬場亮太に遅れを取る形になっており、開発中だったiRCの新FIMタイヤGX20をここ富山でデビューさせ、巻き返しを図った。

しかし、最初の計測となる2周目のテスト、1番時計は馬場だった。続いてわずか0.1秒差で釘村。そして釘村から0.36秒差で保坂修一という3台が超僅差の争いを開始。3周目、馬場、釘村、保坂の順位は変わらずその差は約1秒づつ。一瞬のミスが勝敗を分ける。

そして4周目、保坂が脱落。格上の馬場、釘村に食らいつくためにハイペースでプッシュを続けていた保坂はテスト内のウッズでジャンプした際に右足小指を強打してしまい、負傷。転倒こそ免れたものの、タイムを1分近く落としてしまい、そこでレースをリタイヤする決断を下した。

そして続く5周目、釘村が転倒を喫し、10秒ほどのロス。馬場に余裕を与えてしまう。IAクラスは全部で9周という過酷なレースだったが、馬場は8周目まで好ペースを維持。しかし最後の9周目では3番時計に甘んじた。そこで1番時計を出してきたのは榎田諒介で、釘村は2番。

結果、中盤で築いたリードを守り切った形で馬場が今シーズン4勝目をあげた。全8ラウンドの今シーズンを全勝で折り返すことになった。釘村が2位、3位には昨年のチャンピオン飯塚翼が入った。

馬場亮太
「ここまでうまく勝てているので、今日は珍しく緊張してしまって朝ごはんがあんまり喉を通りませんでした。このコスモスポーツランドは、僕がモトクロスの現役時代に中部のモトクロス選手権でよく走っていたコースで、テストのモトクロスコース部分はほとんどそのままのレイアウトで、当時の経験を活かすことができました。大きなミスはなかったのですが、ウッズの中で湿ってる黒土の中に石が埋まってるようなところのライン取りが難しく、フロントタイヤが石に弾かれてハンドルがとられてしまうと、クラッシュしそうで怖かったです。釘村さんの存在はあんまり意識しないようにはしているのですが、レースの後に釘村さんの車載カメラの映像とかを見て、ライン取りの勉強をさせてもらっています。やはり経験値がすごく高いので、タイムの出し方を知っていますよね。今日の最後のテストでラインを変えてみたらタイムを落としてしまったので、このあとまた下見に行って、明日のレースに活かしたいと思います」

馬場は今日のレースでテスト中に左肩を木に強打し、打撲。DAY2へ影響を残さないことを祈る。

釘村忠
「序盤はけっこう調子が良かったので、5周目でもう少し攻めてみたらラインをミスして転んでしまって、そこで大きく離されて、リズムを崩してしまいました。これまでのタイヤですとレース後半になってブロックが削れてくると、ブレーキングで滑りそうな感覚があったのですが、新タイヤのGX20はすごく耐久性もあって、レース後半まで高いグリップ性能を維持してくれました。たまに亮太とライディングの話をするのですが、すごく考えて乗っているし、モトクロス時代のスキルがちゃんと活かせていると思います。僕もマージンを削って100%で挑まないといけなくて、勝てていないので悔しいのですが、まだまだ成長できる気がしていて、すごく楽しいんです。今日はしっかり休んで疲れを残さないようにし、明日こそ巻き返せるように頑張ります」

飯塚翼
「SUGOが終わった後に一回だけここに練習にきていたので、ラインや土質はわかっていました。今日はドライコンディションでしたが、硬い土に少し砂が浮いていて滑りやすかったので、なるべくコーナーを直線で繋いで、バイクをあまり寝かさないように走りました。馬場さんがどんどん安定感を増してきて、付け入る隙がない感じですね。歳が僕の一こ上で、モトクロスのジュニア時代からずっと憧れていたライダーなので、同じクラスで一緒にバトルできていることに自分の成長を感じています。明日はもっと完全なカチパンになると思います。開け所がわからなくて苦手なコンディションなので、頑張ります」

IB:群雄割拠の接戦を世利が制した

IBクラスはランキング1位の向坊拓巳が前週のJNCC鈴蘭で足を負傷しており、ライバルにとっては逆転のチャンスとも言える大会。向坊に加え星野利康、金田拓典、青木琥珀、世利和輝のトップ5台が僅差で争う激戦となった。

世利の1番時計から始まったレースだったが、釘村と同じGX20をチョイスした青木が3周目でトップに出た。その後、調子を上げてきた向坊が逆転したが、向坊は7周目に大きくクラッシュ。1分近いタイムロスを喫し、大きく後退してしまった。

青木が後半になってスタミナ切れを起こし、なかなかタイムを縮められないでいると、世利が再びトップに浮上し、優勝。今シーズンここまで全勝できていた向坊に初めて土をつけた。2位は星野、3位金田、4位青木、5位向坊という順位。

世利和輝
「今日は5周目を終えたくらいでクラッチカバーが割れていることに気がついたのですが、パドックに戻ってからタイムチェックまでのピットタイムを8分くらい使って修理を終え、レースを続行することができました。今のIBの上位5人くらいはみんな実力が拮抗していて、すごくレースが楽しいんです。ライバルの走るラインや乗り方はタイムを見ればなんとなく想像がつくので、それを参考にしながら走りました。また、チームの先輩の後藤さんに付き合ってもらって一回コスモに練習に来たり、仕事が忙しい僕の代わりにバイクを積み込んでもらったり、チームにすごく助けてもらっています」

また、NAクラスではSUGO2DAYSを制した高橋吟が全テスト1番時計で完全優勝。しかも3周目にはテストタイム6:15.67を記録しており、これはIA6位の須崎友哉を上回るタイムだ。

高橋吟
「今日のコースも苦手ではないのですが、僕的にはもうちょっと難しい方が好みですね。とにかく今年はしっかりポイントを取ってチャンピオンを獲得し、来年IBに上がりたいですね。今日のIAのトップタイムを見ていると、どうすればあんなタイムが出るのか全然わかりません」

NBクラスは田中大貴、石井開都の2強を抑えてJEC初参加の土屋吉輝が優勝。土屋はJNCCで今年COMP-Aクラスに昇格したライダーで、もし今後も続けてJECに参戦するようなら、昇格を目指すNBライダーにとって大きな脅威になるだろう。

土屋吉輝
「初めてのオンタイムエンデューロでしたが、すごく楽しかったです。ルールもよくわからないまま参加したのですが、仲間に教えてもらって、1周走ったら、なんとなくわかってきました。コスモのコースに合わせてコンパウンドの硬いタイヤを選び、サスペンションは柔らかめにセットして挑みました。JNCCは3時間耐久なので、JECのテスト区間の全力アタックの緊張感はとても新鮮で面白かったです。明日も楽しく走れたら、また参戦を検討したいと思います」

そしてウィメンズは昨年のチャンピオン、保坂明日那が今シーズン初優勝。保坂は今年、自身のレベルアップを課しており、フルサイズの125SX(KTM)でJECに挑んでいたが、メンテナンス中のため、昨年のチャンピオンマシンであるKX100での参戦だった。

保坂明日那
「今年は練習もレースも125SXで出ていたのですが、ずっとマディだったこともあって苦戦が続いていました。すごく久しぶりにKX100に乗ったのですが、やはり足がつく安心感がすごく大きくて、素直に楽しかったです。しかも125SXに乗っていたことで目が速度に慣れたのか、以前よりもコーナーに思い切り突っ込めるようになった気がします。次戦からはまた125SXで出たいと思っていますので、それでもちゃんと勝てるように頑張ります」

なお、当初DAY2はDAY1のコースを逆回りする予定だったが、リスクを避けるためDAY1と同じ回り方に変更。さらにDAY1終了後にIA、IBライダーにアンケートを取った上で、熱中症対策のために周回数を減周。ルートも一部カットされることが発表されている。

これが結果にどう影響するのか。DAY2も熱いバトルを期待したい。

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