Rd.1 広島大会「類を見ない激マディのテージャスランチを、鈴木健二が逃げ切り勝利。忍び寄る世代交代の音」

昨年に引き続いて、コロナ禍で無観客開催となった全日本エンデューロ選手権。ストーブリーグでめだった動きは、まずはチャンピオン釘村忠のIRCタイヤとの契約だ。元ファクトリーライダーに珍しく、昨年Betaへと電撃移籍をおこなった釘村だったが、こちらIRC勢への参入もごく稀なケースと言える。釘村によれば、IRCのエンデューロへの熱意に動かされたというところ。また、ゼッケン3を背負う保坂修一は、それまでのGASGASから新生GASGASへ。ご存じの通り、KTM傘下となった新生GASGASは旧GASGASとは似て非なるもの。世界中のレースで一線級の活躍をみせるコンポーネントをベースにした新たなEC250は保坂とジャストマッチ。今年こそ1位を目指したい保坂にとって、強力な武器となる。

テージャスランチは、この全日本開幕を迎える前にかなりの路面補修をおこない、いわゆるこれまでの難所が通常の林道のようなイージーなものになった。だが、当日は強めの雨が夜半から降り注ぎ、刻々とそのコンディションは悪化の一途を辿った。長年、この全日本のリーダー的存在を担ってきた鈴木健二も「ここまで降ったのは、ほんとうに久しぶり。とにかく酷い状況でしたね」と舌を巻いた。

後半から巻き返しを図った飯塚翼が、鈴木を追い詰める

IAクラスでは、ゼッケン1を背負う釘村が思うようにペースを上げられず序盤に苦戦。これに対してまさに水を得た魚だったのが鈴木である。モトクロス時代からマディに強かった鈴木は、持ち前のレブ付近を多用したハイテンションなライディングで、1番時計を連発。トップを独走する。4周目、優勝候補本命の釘村がエンジンをストップ。そのまま息を吹き返すこと無く、あえなくDNFとなってしまった。

2番手を争ったのは、若手の二人。順当に保坂がトップタイムを奪いつつ、3番手飯塚翼を先行。古くからのライバル関係は、しかし中盤から様相が変わっていく。ここにきて飯塚は、保坂どころか鈴木を超えるタイムで保坂をパス。テスト内でも順位が入れ替わるほどのハイペースだったが、トップ鈴木はこれに気付かず…ラストラップ前、その差2秒41まで追い詰められて、ようやく鈴木に火が付いた。

緊張が走る最終テスト、鈴木は飯塚をつきはなそうと全力アタックへ。飯塚も、初優勝を目前にさらなる激マディのテストへイン。もしかしたら、そのまま走っていれば飯塚は2秒41をひっくり返し、優勝を手にしていたのかもしれないが、テスト終盤のヒルクライムで失敗してしまいあえなくタイムロス。2位に甘んじることとなった。

鈴木は「今年はエルズベルグロデオに出ることもあって、ハードエンデューロに力をいれています。世代交代もそろそろ、と思っていますし、チャンピオンを狙うつもりはないのですが…朝から乗れてましたね」とコメント。49歳になる鈴木が、スピードレースの第一線から退く意向を示したのは、初めてのことではない。だが、結果的にこのレースも鈴木をとめられるものはいなかった。

初優勝を逃したものの、自身初の2位へ入った飯塚は「最終ラップでやっちゃいましたね。もう少しラインをみておけばよかったんですが…。今日は、序盤にかなり攻めていたつもりだったんですが、うまくタイムに繋がらなかったんです。それで中盤にラインを思い切ってかえてみたり、落ち着いて走るようにしたらタイムが出たんですよ。マシンを、今年から4ストにスイッチしたのも、よかったのかもしれません」とのこと。

これに対照的だったのが、保坂。「序盤よかったのに、荒れていくコンディションに対応できませんでした。実力不足ですね。1番時計をひとつだせたのは、よかったと思います。今回は、本気で1位をとりにいくつもりだったから悔しいですね」と。オフシーズンに、親元から離れて関西へ拠点を移し、よりバイクに集中できる環境を手に入れた。

IAでも5番手へ食い込めるIBルーキー酢崎友哉

時折、IAイーターとも表現すべき、実力をもったIBが登場する全日本エンデューロ。2021年は、酢崎友哉が文字通りずば抜けたスピードを発揮した。荒れ狂うマディにおいて、ベテランのような安定したライディングを披露、全テストで1位、圧勝だった。

「ひどいマディで、苦戦しました。マディ自体は、得意なんですが…。ホームコースの成田モトクロスパークよりは、路面も滑らなかったですね。どう身体を使えばうまく走れるのか、レース中に少しずつ理解していました。今年は、IAのタイムにどこまで食い込めるか、挑戦したいです。1~3位くらいのタイムを目指しています」と酢崎。2位には富永陽平、3位に月原邦浩がイン。

なお、若手の勢いも特筆すべきだが、IBの4位は60歳オーバーの田中弘行。7位も同じく還暦を超えた安喰好二が手にすることに。なお、IBでは半分以上が脱落しDNFであった。

高校生の保坂明日那が、初優勝

開幕は、ウィメンズクラスのメンバーは総入れ替え。IA保坂修一の妹である保坂明日那に、和田屋SRCの和田綾子の勝負に。全日本格式として、4周をもって争われるフルレングスのオンタイムエンデューロを、保坂がペナルティわずか3分で勝利。

「5歳からバイクに乗っていて、JNCCのキッズ&トライなどに出ていました。兄が関西にいってからは、練習は一人で走っています。学校の公休がうまくとれれば、JECのウィメンズでシリーズチャンピオンを獲ることが目標です」と保坂。

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